お客様の心をつかむ プロのアプローチと関係づくり8つの定石
1、初回訪問の5大ルールはこれだ
次にいよいよ訪問活動に入ります。それには、まずプランニングが必要です。
つまり、見込み客ごとの訪問計画を持たなければなりません。
セールスとは、相手に対して何らかの提案、あるいは説明をする必要があります。
換言すれば、相手を訪問する何等かの理由を持つべきです。
一般的に、初回訪問のときは、物を売ることを考えてはいけません。
次の4つを目的とすべきでしょう。
①相手を知ること
②自分を知ってもらうこと
③信用されること
④商品の存在を知ってもらうこと
そこで、まず初回訪問の5大ルールを挙げましょう
初回訪問のときには、次の5つを守ってください。
《初回訪問の5大ルール》
①商品を売込もうとしてはいけない。ただ、あなたと商品の存在を知ってもらうだけでよい
②絶対に深追いしてはいけない。早めに切り上げること。できるだけ好印象を残すことが大切
③次回訪問のきっかけをつくる。従って、カタログやパンフレットはなるべく置いてこないようにする
④社内の様子、掲示物、その会社のパンフレットなどを観察し、もらえるものがあったらもらってくる
⑤購買決定者が誰であるかを知ること。また、その人の立場、性格なども分かれば次の訪問に役立つ
2、訪問目的と目標を明確にせよ
セールスコースをする場合、1回目の訪問で目的が達せられることはごく稀です。
初回のセールスは、何回も続けて訪問しなければなりません。
しかし、その場合、訪問ごとに明確な目的と、その都度達成すべき目標を設定することです。
それも、図3のような、階段式に一連のシリーズとして実施しなければ効果がありません。
つまり、1回目の訪問における目的と目標、二回目の訪問における目的と目標というふうに、
順次、3回目の訪問、4回目の訪問と続けて行い、最後に注文に至るわけです。
3、心をつかむ話し方はこうして身につける
大嫌いな人から、「お前は馬鹿か、気をつけろ!」と言われれば腹が立ちます。
しかし、尊敬し心服している上司から、「お前は馬鹿だなぁ、気をつけろよ」と言われれば、
「はい、これからは気を付けます」と素直wにうなずくことができます。
同様に、「もうすぐ、クリントン大統領が失脚すると森首相が言うのと、隣のおじさんが言うのでは、
まったくその信用度が違います。
「何を」言うかということはもちろん大切ですが、「どのように」言うか、
「誰が」言うかということはさらに大切なことです。
仮に、あなたが本書でセールストークを学び、お客様の前でよどみなく商品説明をしたとしても、
お客様が買う気になるとは限りません。
セールストークの中身、つまり「何を」言うかのみがすべてであれば、それこそ
トップセールスマンのトークをテープにとり、それを繰り返し聞いて暗記し、
見込客の前でそのとおり話せばよいということになります。
しかし実際は、オウムのように他人のセールストークを真似しただけでは、成績向上は望めません。
たしかに、canned talk(キャンド トーク)と言って、缶詰のようにきっちり決められた
セールストークを暗記して、それを実際に使用して成功している業種もあります。
また、キャンドトークで成功するといっても、いい方に心がこもっていなければ商品は売れません。
トークの中身だけが大事なら、お客様にカタログを渡して、それを読んでもらえば済むことです。
あなたの言いたいことは、それこそカタログ、提案書、企画書に書いてあるはずです。
しかも、それらの方が、はるかにきれいに分かりやすく商品の内容を伝えているはずです。
それにも拘わらず、わざわざお客様の前で説明するということは、話の内容以外の何かがあるからです
その一つが、話し方、言い方、です。
1度、あなたのトークをテープにとって、聞いてみて下さい。
説得力のある声、聴きやすい言い方をしていますか。
大切なのは、熱意であり、真剣さです。それが、声を通じてお客様に伝わっていると思われますか。
アメリカの心理学者レビットの実験によると、人は声を聞いただけで、話す相手の感情が
どのようなものであるか、相当程度分かってしまうということです。
☆大事なボディランゲージ
同様に、話すときの顔の表情、身振り、手振り、姿勢、外見、服装などはどうでしょうか。
これらのボディランゲージが、重要な説得要素であることは周知の事実です。
自信の無さ、ヤル気の無さは見ただけでは分かります。
前述のレビットの調査でもわかるように、あなたの心の中の感情が顔を見ただけで適中されてしまう、
というデータもあります。(次頁表4)
できれば、自分の話し方をビデオにとり、それを観察してみましょう。
おそらく、オドオドした自信の無い話しぶりや、キョロキョロした視線、意味の無い手や
足の動き、クセなどを発見して唖然とするはずです。
もしビデオの設備がはいのなら、奥さんか友人に相手になって、チェックするのもよいでしょう。
いずれにしろ、ボディランゲージの改善は、セールスマンにとって必須です。
従って、これからセールストークを学ぶにあたり、次の三点を十分開発するよう心がけてください。
①何を話すか(セールストークの中身)
②どのように話すか(話し方、言い方、声)
③どのように見えるか(ボディランゲージ、態度、服装、等)
4、セールストークには4つのステップがある
訪問先で、いきなり販売活動をする人はまずいません。
挨拶から始め、時候あるいは景気の話しなどをして、ある程度の雰囲気が出来てから、
尾も室にセールストークに入るわけです。
ところで、お客様に物を売る場合、セールストークは大体次のような段階でなされるはずです。
①アプローチの階段
②商品説明の階段
③反論克服の階段
④クロージングの階段
まず、アプローチの階段では、相手の注意を引き付け、興味を持たせます。
次の商品説明は、別名セールス、プレゼンテーション、または単にプレゼンテーションとも言います。
つまり、商品の特徴や利益を説明し、お客様に売り込むことです。
すると、お客さまはおそらくすぐには決めずに「値段が高すぎる」「商品が気に入らない」など
否定的なことを言ってくるでしょう。
つまり、反論してきます。
そうした反論に上手に答え、最終的に相手を納得させて注文を取る、
これをクロージングと言います。
別の表現をすれば、セールスは次の四つの段階で成り立っているのです。
①アプローチ(Approach)・・・・注意と興味の喚起
②プレゼンテーション(Prasentation)・・・・商品説明
③オブジェクション ハンドリング(Objection Handling)・・・・反論克服
④クロージング(Closing)・・・・注文を取る
これは、例えて言えば野球のようなものです。
図4のように、一塁がアプローチ、2塁が商品説明、3塁が反論克服、そしてホームベースへ
駆け込んでクロージング、つまり注文の獲得ができたということです。
たまにはホームランのような長打も出ますが、①から④までの順番が変わることはありません。
右は、何か月もかかる大型商談の場合でも、その日のうちに決まてしますような
短期的なセールスでも同じことです。
セールストークは、常に右の四つの段階で行われます。これをそれぞれの頭文字を取って
「アポック」(APOC)と覚えて下さい。
5、まず、お客様に「心のベルト」をかけること
セールスに成功しようと思ったら、最初の段階で、相手の注意をすばやく、完全にひきつけなければ
なりません。
ところで、あなたがお客様を訪問したときに、お客様は何をしているのでしょうか、
また何を考えているでしょうか。
おそらく、お客様は自分のことで精一杯のはずです。
自分のことには関心を持っているけど、あなたのことには無関心、いやそれ以上で、あなたのことを
邪魔者ぐらいにしか思っていないかも知れません。
これは、初回訪問だけではなく、もう何十回も通っているお得意さんの場合でも同じです。
あなたが訪問した時「あっ、タイミングの悪い時に来たな、忙しいのに」と思っているかも知れません。
そのような相手を、あなたに注意を向けてくれるところまで持っていくには、
充分に研究されたテクニックが必要です。
当社のあるお得意さんは、次のように言っています。
「私と会う前に、会社のことや商品のことはもちろん、こちらが苦心している専門テーマなどを
勉強してきて、『こうされると、もっと良いと思いますが・・・』と部外者の目で私的されると、
思わず耳を傾けたくなりますね。売込まれるより先に、その人間が信頼できる人物か、
あるいは誠実でヤル気があるかどうか、が取引のきっかけをつくるのではないでしょうか。
ともかく、相手のことを一生懸命研究して、それに合致した提案をしてくれる人でなければ、
商売はしたくないものです。」
このように、相手の関心を引き付けるということは、相手に交換を持ってもらうことで、
それがアプローチの目的です。つめり、客先を訪問したときには、第一に必要なのは、
お客様との共感ゾーンをつくることなのです。
図5に示したように、セールスマンと見込み客の間には、常に壁があります。
セールスマンは売込もうとしますが、お客さまか逃げよう断ろうとします。
その結果、そこには相反する回転が生じるわけです。
それでは、図の二つの回転する輪を、同じ方向へ回転させるにはどうしたらよいでしょうか。
そのためには、セールスマンとお客さまとの間に、心を結ぶベルトをかける必要が
あるわけです。それを私は「心のベルト」と呼んでいます。心のベルト、つまり
「心理学の用語で「ラポール(Rapport)」と言います。
もっと分かりやすく言えば、お客さまから「お前はいい奴だな」「感じがいいね」と
思われることです。
6、お客様に好意を持ってもらう7つの方法
では、どのようにベルトをかければ回転が合って、良い関係ができるでしょうか。
それには、まず相手の注意を引きつけることが必要です。
どうすれば、相手はこちらを向いてくれるでしょうか。例えば、あなたが真っ赤な背広を着て、
ギターを弾きながら相手の会社に乗り込んだとしたら、どう思われるでしょう。
確かに相手の注意を引きつけることはできます。
しかし、これはあまり現実的な方法とは言えません。
もっと確実で、好感を持たれながら注意を引きつける方法として、次の七つが考えられます。
①褒め言葉
②プレゼン
③質問を投げかける
④何かを見せる(掲示物)
⑤アイディアを提示する
⑥紹介者を使う
⑦サービスを提供する
右の七つは、積極的に好意を持ってもらうための方法です。
つまり、これらのアプローチ法が目指すのは、最初の段階でお客様と
①お互いに知り合う
②仲良くなる
③楽しい雰囲気をつくり、もっと聞きたいと思われる
といった目的を達成することです。
7、褒め言葉が相手の心を開かせる
前節では、お客様に好意を持っていただくための、7つのアプローチ法があると述べました。
では、具体的にそれについて考えてみましょう。
例えば、褒め言葉がそれです。
「おたくの玄関はとてもきれいですね。手入れが行き届いていますね」とか
「御社の業績は、毎年随分伸びていますね」とか
「御社の商品は、とても評判がいいですね」と
いうふうに、相手が喜ぶことを言ってあげることです。
昔から言われることですが、褒められて怒る人はまずいません。
褒めるというのはお世辞とは違います。お世辞は、いわば嘘です。人は、嘘は聞きたくありません。
しかし、その言葉の中に、本当に感じたことがあれば、必ず相手に通じるはずです。
私事で恐縮ですが、私は子煩悩ですから、子供のことを褒められたり、聞かされたり
するとうれしくなります。また、私はクルマが好きで、今3台持っています。
ですから、私の持っているクルマ、とりわけスポーツカーのことをいろいろ訊かれると、
得意になって話し込んでしまいます。
このように、人には、是非話したいと思うこと、他の人から認めてもらいたい、
褒めてもらいたい、と思っていることが、いくつかあるはずです。
ですから、最初の段階で、できるだけ早くそれを見つけて、話題にすることがコツです。
しかし、褒め言葉を使うにも、ただ漠然と使うわけにはいきません。
事前の準備や情報獲得が必要になるでしょう。事前に褒めるところが見つからない場合でも、
相手の何気ない会話や態度、服装などを注意して観察すれば、その人の趣味嗜好もしくは
得意とするところが分かるはずです。
それをできるだけ早い機会に見きわめて話題にしましょう。それがコツです。
当然のことですが、その場合あくまで的を射た褒め言葉でなければなりません。
8、プレゼンは意外な効果を発揮する
日曜日の午後など自宅にいると、しばしばセールスマンが売り込みに来ます。
私は、商売柄できるだけ彼等に会って話しを聞くようにしています。
そんな売り込み方をするか研究しているわけです。
セールスの上手な人もいれば、どうしようもなく下手な人もいます。
そうした中で、やはり注意を引きつけられるのは、何かをくれる人です。
例えば、新聞の勧誘がよく来ます。新聞の勧誘員は間違いなく景品を持ってきます。
大抵は洗剤、あるいはこの前など小型のテープレコーダーをくれた人もいましたし、
歌舞伎やミュージカルの招待券、いわゆるレンズ付簡易カメラをもたらったことも
あります。私は、景品をもらうと、3ヶ月くらいその新聞を取ってあげることにしています。
そのために、私のうちではしばしば購読紙が変わります。
どんなお金持ちであっても、何かをもらうのは嬉しいものです。
従って、セールスを成功させようと思ったら、カレンダーの1つ、手拭1つ、
なんでも結構ですから、何かプレゼントを持参するように心がけて下さい。
必ずしも、高価なものである必要はありません。楽しいもの、できれば珍しいものがいいでしょう
以前、私が感心したのは、3Dピクチャーといって、飛び出す写真を持って来た
人がいたことです。きれいな魚や花が飛び出してくる絵葉書のようなものでしたが、
珍しいのでそれをずっと机の上に飾っておきました。
その花を見るたびに、当然それをプレゼントしてくれた人のことを思い出します。
これなどプレゼント作戦ということでは、かなり効果的でしょう。
ちいさなチョコレートやキャンディーの塁をポケットに入れておき、受付の人に
挙げるのも、好感を持たれる1つの方法です。
私が、アメリカでセールストレーニングを受けているとき、一緒に廻ったアメリカ人の
セールスマンは、いつも小さなキャンディーの箱をカバンに入れておき、
必ず受付の女性や売り場の女性に挙げていたことを思い出します。
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