NLPセールス理論で営業の達人に 公開!ものすごい 販売説得術

2章 よい営業マンは聞き上手


自分はしゃべるな、相手の話を聴け


営業活動とは何か、考えていただきたい。
すでに述べたように、その第一は、よい人間関係をつくることである。よい人間関係ができる
と相手の心が開くから、「いま、どんな機械をお使いですか」などと、こちらから質問をしやすくなる。
これが営業活動の第二段階である。人間関係をつくらず、いきなり同じことを聞いたら、「お前、おまわりか。なんで俺が質問に答えなきゃいけないんだ」と相手は不愉快に思う。
だから、人間関係を通っておく必要があるのだ。

さて、人間関係ができたら、次に大切なのはお客さんから情報を得ることだ。自分の売り込みたい商品のことをまくしたててはいけない。まず、相手がどんな問題を抱えているか、どんな希望を持っているか、を知ることが重要である。

ところが、人間は人の話をよく聴かない。ぼんやりと耳で「聞いて」イルだけで、注意力を集中して相手の言っていることを理解しようとする「聴く」という行為がなかなかできないのだ。

たとえば、「私は七二四八五個のジョークを言ったり聞いたりするのが好きです」という言葉を聞いたとして、それを正確に繰り返せる人はほとんどいない。「聴く」ということは、訓練と集中を要する。それだけに、お客さんの話をよく聴き、理解して的確な提案をするセールスマンは評価される。

日経新聞のアンケート結果をご覧いただきたい。不動産やOA機器、食品や薬品のトップセールスマンに、営業で何が必要かを質問したところ、営業の達人たちは口を揃えて、「とにかく相手の話をよく聴く」と答えたそうだ。さらに、相手の年代層に合わせた話し方をすることや、相手に合わせて話題を選ぶことも必要だ。営業マンは話題が豊富でなければならない。映画を観て、本を読んで、常に広い知識を持っていたい。

先に「雑談八割、商談二割」と述べたが、
「おい、俺は急いでいるんだ。なんの用だ?」と言うお客さんの場合は、パッと本題に入った方がいい。

また、相手に合わせるといっても、見えすいたお世辞はご法度だ。何度でもすぐほめると、「調子のいいやつだな」と警戒される。上手な褒め方は後で説明しよう。

さて、最近のエピソードを紹介したい。

私がある会社で講演をした。無事、公演が終わり社に戻ったとき、わたしは営業担当の西村に質問をした。
「西村さん、今日のお客さんはこれからどうなるの?」

彼は答えた。「実は第二弾のテーマを考えてあります。それをもって来週、今日のお礼かたがた売り込みにいこうと思っています」と。

そこで、「西村さん、お客さんのところに行ってベラベラしゃべって売り込むなと言っているだろう」と言って注意をした。売り込む前に聴かなければならない。

まず、「こんにちは。この前はどうでしたか」と質問をする。
お客さんは「よかったですよ」と答えるだろうから、どんなテーマをお考えですか」と質問すればいい、というのだ。相手の話をよく聴き、希望にそったテーマを実施するようにすすめれば、商談がスムーズに進むと教えた。

私も営業と教育を20年以上やってきたので、聴くことの重要性を痛感している。そこで西村は、お客さまのところに行ってこう言ったそうだ。「営業はしゃべっちゃダメなんだ。もっと聴かなければいけないと箱田は言うんです」と言ったところ、「そう、西村さん、今度はそれを公演のテーマにしましょう」とお客さんに言われた。

彼は自己開示して、自分の失敗話を披露し、結果として、商談を一つ成立させることができた。
「提案はお客さんの話しをよく聴いた後で」というのはセールスの鉄則である。ぜひ覚えておきたい

説得はまず聞くことから
聞くことがいかに重要かをしめすエピソードを紹介しよう。

明治時代、鎌倉の円覚寺に釈宗演という偉いお坊さんがいた。釈宗演は英語も達者だったのである日、アメリカの教授が禅について教えてもらいにきた。彼はキリスト教と仏教の比較論文を書くことが目的だった。

いろいろな話をしている途中で、釈宗演は「隣のお部屋でお茶でものみましょう」と言った。
そして、お茶を茶碗に注いだのだが、どんどん注ぐので、お茶がこぼれていく。「和尚さん、こぼれていますよ」と教授は言った。

すると、釈宗演は「この茶碗はあなたの心と同じです」と語った。そして説明したのだ。
「あなたが教えてほしいというから、私は全の話をした。しかし、あなたの心の中には『キリスト教とどこが違うのか』とか『座禅なんか苦しいだけで、まやかしじゃないか』とか雑念が一杯ある。

だから、私の話ははねつけられて、どんどんこぼれてしまう。本当に禅について知りたいならば、まず、あなたの心の中を空にしてください」と諭したそうだ。
この有名な話方学ぶべきことは多い。お客さんの心もこの教授と同様に、一杯である。家のローンのこととか、子供の教育のこととか、仕事のこととか、お客さんは悩みを山ほど抱えている。

そういうときに限って、セールスがくるのだ。みんなさんが相手の話も聴かず、自分のために自分の売り込みをしたら、どうだろうか。お客さんは自分のことで頭がいっぱいだから、腹を立てて「帰ってくれ。用があれば、こちらから連絡するよ」と言うだろう。

しかし、みなさんが楽しい話をしてお客さんをリラックスさせ、お客さんの話をよく聴いてあげたらどうだろうか。
「そうですか。上のお子さんは今年、受験ですか。それはご心配ですね」などと言ったら、「そうなんだよ。ところで今日は何?」と言ってくれるかもしれない。自分の言いたいことを言って、お客さんは気持ちがすっきりしたからだ。

誰でも自分の話を聴いてもらいたいと思っている。ならば、すぐに商売に結びつかなくても、お客さんの話をよく聴いてあげて、よい人間関係を築くことは重要だろう。

聴き方の五大ルール


次に、上手な聞き方をお教えしよう。実は聴き方には5つのルールがある。

第一は、「うなずき効果」だ。マタラッツォという心理学者が実験したところ、相手の話を
20秒でやめた。ところが、意識してときどきうなずいたら、相手は60秒、話し続けたという。

お客さんの間に流れる沈黙は、セールスマンにとってつらいものだ。しかし、要所要所でうなずくだけで、お客さんは話し続けてくれるのである。その分、情報もたくさん入ってくる。

要は、耳だけでなく「全身で聴け」ということだ。うなずいて首を縦に振るだけでも、「あなたの話しを熱心に聴いていますよ」というメッセージが伝わる。

第二は、「相づち効果」だ。「なるほど」「ほほう」「そうですか」と相づちをうつのである。
すると、こちらあが話しに関心をもっていることが直に伝わる。

私は「アイウエオ」の相づちをよく使う。
「アあ、そうですか」

「イやぁ。驚きました」

「ウわぁ、すごいですね」

「エ?本当ですか」

「オお、そうですか」

と驚いてみせるのだ。相手は調子が出てきて、どんどんしゃべってくれる。

第三は、「視線効果」だ。相手が話しているときには、相手の目をちゃんと見る。それも、「この人はいい人だな」と思って、やさしいまなざしで見るのである。そうすると、相手は安心して、話しを続ける。間違っても、疑わしそうな目つきをしたり、にらみつけたてはいけない。

第四は、「質問効果」だ。「あ、すみません。いまおっしゃったことに、もう1度教えてもらえませんか」と頼めば、「バカだなぁ、君は」などと言いながら、どんどんしゃべってくれる。「それはいつのことですか」とか「なぜそうなさったのですか」とか、要領よく質問をさしはさむと、話し手は嬉しくなるものだ。

絶対に行ってはいけないのは、「お客さんのおっしゃる意味がわかりません」という言葉だ。
これは冷たいいやな言葉である。これを言われるとスーッと話をいいたくなくなる。相手の言っていることがわからない場合は、「それは〇〇ということですか」などと、もっとやさしい言い方で質問しよう。

そして、第五は、「メモ効果」だ。話を聴きながら、ポイントをメモする。その姿勢に相手は感動するのだ。メモを見ながら、「さきほどは〇〇とおっしゃったのは、××という意味ですか」などと確認をすると、相手を重要視していることが伝わる。

聴くというのは、実に難しい。私なども話を聴きながら、ついほかのことを考えてしまうことがある。しかし、以上の五大ルールをつかえば、こちらも聴くことに集中しやすいのである。

バックトラッキングを習慣化しよう


ロシアの演出家スタニスラフスキーは、「聴くということは、人の話すのを観ることである」と語った。
人の話を聴くときは、全身の注意を集中させるのがコツである。耳で相手の声の調子などを聞くことももちろん必要だが、目で相手の視線や動作を観察する。

そうやってちゃんと聴いていれば、「イエス」と口では言っていたお客さんが、本当は心の中では「ノー」と思っている場合も見抜くことができ、それに合わせた対応ができる。

さらに、話を聞き終えたときに、ぜひしてほしいのがバックトラッキングだ。これは相手の話を
要約して繰り返すことである。

たとえばこういうふうにする。「今日はいろいろとありがとうございました。お話をまとめさせていただくと、お客さんのおっしゃりたいことは三つですね。一つ目は○○、二つ目は○○、そして三つ目は○○ですね。ほかに何かございませんか」
このバックトラッキングをやると、話の内容の確認ができるうえに、相手は「お、ちゃんと聴いていたな」とか「頭のいいやつだ」と頼もしく思うのだ。

もちろん、こちらは、相手の話しを聴きながら、後でバックトラッキングできるように覚えておくのである。長時間の商談のときにはメモをとってもよいが、立ち話程度だったら、メモをするのはおかしい。

このバックトラッキングはぜひ習慣化して、身につけていただきたい。商談の最後にこれをやることで、つぎの展開にスムーズに進むことができるからだ。

次に、営業の達人はどういう新規開拓法を行っているか、ご紹介しよう。アンケートに答えて、達人たちは、次のように語った。
「ちょっとした頼まれごとでも誠意をもってあたる」

「思わぬ出会いをおろそかにせずフォローする」

「細やかなサービスをする」

「連絡を絶やさない」

「お客になりそうな人をなりふりかまわずつかまえない」

等々だ。相手の気分を害さないように注意して、喜んでもらうことを身上としている点が興津している。

演習1 全身を使った会話術


ここまで学んだ話し方と聴き方を使って、実際に会話をしてみよう。二人一組になって立ち向かい合っていただきたい。

ジャンケンをして、勝ったほうが最初に話す役で、負けた方が聴く役だ。テーマは以下のうちから一つ選んでほしい。
・最近考えていること
・最近なやんでいること
・最近怒っていること

テーマが決まったら、会話をはじめよう。話し手はまず、相手の目を見てにっこり笑ってから話し始める。LOOK SMILE TALKだ。

腕は前に組んでも、後ろに組んでもいけない。その自由になった腕で、ジェスチャーをするのだ。話し手は、相づちやうなずきを忘れないように。

そして、話が終わったら、聴き手がいまの話を「あなたのおっしゃったのは○○ですね」と
バックトラッキングした後、「ほかに何かございませんか」と言って、会話を終えるのだ。
次に、話し手と聴き手が交替して、同じことを繰り返す。

いかがだっただろうか。これを実際にやってみると、腕のやり場に困る人が多い。
ジェスチャーの習慣がないからだ。しかし、腕は後ろに組むと偉そうになり、前に組みと特に
外国人に変なポーズだと思われるので、絶対に組まない癖をつけていただきたい。

話し手の方はうなずいてもらい、バックトラッキングしてもらって、「私の話をちゃんと聴いてもらえた」とうれしく思うはずだ。その気持ちを忘れずにいて、ぜひお客さんにも同じ喜びを味わわせてあげてほしい。

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