序章 心と体を準備しよう
笑顔はセールスマンの最大の武器
販売説得術の本論に入る前に、セールスマンとして、ぜひ心得ておいていただきたいことを申し上げよう。
その第一は、「笑顔をわすれるな」ということだ。
「なんだ、そんな話は聞き飽きている」と思われるかもしれないが、笑顔を忘れているセールスマンが驚くほど多い。
イラストをご覧いただきたい。日ごろあなたは右のタイプだろうか、左のタイプだろうか。
自分では左のつもりでいても、案外右のようにブスッとしていることが多いのではないか。
ボーナスが入ったときやデートの約束が取れたときにはニコニコ顔になっても、ふだんばしかっめ面、という人が大部分だろう。それはそうだ。私たちの人生では、うれしいことより、苦しいことや心配なことのほうがはるかにたくさんあるからだ。
しかし、しかめっ面でいては、よいことなど怒らないものである。
お客さんも会社の人も、家族も、みんな悩みを抱えている。相手はそれぞれ自分の悩みで手いっぱいだから、あなたがしかめっ面をしていても、「どうなさったのですか?」と聞いてくれるわけでもない。「うっとしいやつだ」と思われ、「あんな顔はもう見たくない」と敬遠されるかもしれない。
では、苦しい時にもグッと耐えて、笑顔を浮かべたらどうだろうか。事情を知っている人は「あ、○○さん、頑張っているな」と感心するだろう。そして、あなたの笑顔に、お客さんはホッとする。
「商は笑なり、笑は勝なり」と昔の人は言った。笑顔があるところから、なごやかな雰囲気が生まれ、会話が始まり、商談につながっていくのである。
お客さんはセールスマンに、「楽しさ」と「役に立つ情報」の二つを求めている。だから、まず笑顔で相手の心をほぐし、明るい気分になってもらうことが大切なのだ。
みなさんの周りのトップセールスマンを見ていただきたい。みんな実によく笑うはずだ。私の弟は百貨店の外商のやり手セールスマンだが、自分の言ったことに自分で笑ってしまうほど、始終笑っている。
「そうはいっても、作り笑いなんかできないよ」という人もいるだろう。日本人は照れ屋だから、にっこり微笑むのが下手な人もいる。
そういう人にすすめたいのが、鏡の前でのトレーニングだ。いつでも最高の笑顔がぱっと浮かべられるように、鏡に向かって練習する。
お客様を訪問する前に、トイレに入って鏡の前に立ち、服装や髪型をチェックした後、にっこり笑ってみるのもいいだろう。ここで、「よし、やるぞ!」と自分に気合をかければ、気分までシャキッとしてくる。
「形から入れ」という言葉は、セールスマンにもあてはまる。新調の服を着た日は、誰でもちょっと自信がついたような気分になって、胸を張って歩くものだ。和服を着た娘さんは、ジーンズでいるふだんよりも、確実におしとやかになる。それと同じように、いやなことがあってもニコニコしていれば、いつの間にか心まで明るくなってくる。
「笑顔は人間の最も大切な財産、しかめっ面は精神的汚染剤だ」と心理学者のマッコーネルは語った。ぜひ笑顔を身につけて、自分の心も周囲の人も、明るい気分にいていただきたい。
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